高校生のメモ①
iPhoneのメモを漁っていると、消せなかった小説?エッセイ?よくわからない文章を見つけたのでもうここで埋葬しておきます。
多分こんな気持ちには一生ならないと思うので。
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得体の知れない何かが私の中を覆っていた。
不安とかおごりとかもう何が何なのか分からなかった。
でも受験が嫌だ。
それが一番なのはわかった。
勉強は嫌いではなかった。
ただ勉強のために、テストのために自分の好きなものを我慢しなければいけないことが納得できなかった。
受験を早々に終わらした友達は皆、好きなところに遊びに行っている。好きなことをし、大学への余暇を楽しんでいる。他人を見ているからダメなんだと言われてそんな事を気にしないように努力した。
だけど私は病んだ。
そして結局自分なのだと実感する。
他人の受験が終わろうが終わらまいが私の受験は続く。他人が遊んでようが楽しんでようが私の受験は続く。それはもう決定事項だった。避けては通れないものだった。
みんなが応援してくれるからやっているだけだ。貴方ならいけると期待してくれているのは裏切れなかった。
そしてそれでも私は楽しい事に逃げたかった。
同じ学校でこんな事を理解してくれる人なんていない。皆目標に向かってひたむきに勉強している。
そんな友達達と自分では頑張りの価値が違った。
未来への欲が違った。
私は今を生きていればいいと思っていた。
周りは浅はかで甘い考えだと言う。
当の本人である私でさえ、何故こんな考えしか出来ないのかと思ってしまう。
それでも私は、
それでも私は、
何かと戦うことを強く拒んだ。
好きなものを見ている時は気が安らいだが、それは最初だけだった。好きなものはいつしか今楽しめないと後悔の思いに駆られるようになった。それは好きなことをして遊んでいるやつを見れば見るほど、想像すればするほど膨らんだ。
気がつけばだらりと勉強して夕方になっていた。ずっと席に座っていた事でお尻が多少の悲鳴をあげる。
岩のように固まった腰を上げると尿意を感じた。そういえばお昼にもトイレのために外には出ていない。
ちょうど良い。
お母さんの古いブランド物のジャケットを羽織り真っ白のスヌードを巻き外に出る。
短い水しぶきが頬にあたった。
雨だ。
あいにく傘を持って出なかった。
大丈夫だ、これぐらいの雨ならと思って私は歩き出した。本当についさっき降り出したみたいで皆傘をさしていない。フードを被り小走りする家族が見えた。私は傘もささずゆっくりと歩いていた。途中、白いスポーツカーが私の隣を通るときだけゆっくりと減速していたのは傘もささずフードも被らずまるで雨が降っていないかのように振る舞う私を不思議に思って観察していたのだろうか。
どうやって帰ろうと思案し悩む人たちが入り口にはたむろしていたが、押しのけて中へはいる。
入り口付近のトイレは満室だったから一つ上の大きな静かなトイレに向かった、建物の端にありあまり使用感がなく私が一番好きな場所だった。
いつも端から2番目の1人用に入る。
何故かそこを選んでしまう。
ドアが重く閉めるのにいちいち時間をとるが一度そこに入るとなんとも心地がよかった。
さっき私とトイレの入り口ですれ違った白いブラウスの女の人の匂いだろうか。凡人には出せない甘く、それでいて嫌気のない花の匂いがした。トイレの消臭剤ではない心地の良い花畑があった。
トイレを済まして外に出ると雨がもうポツリとおさまっていた。
ふと私は自分の中で重くのしかかった黒い鉄の重りが、軽い発泡スチロールで出来た重りに変わったかのように軽くなっていたことに気がついた。
でもまだ色は黒い。
外に出たから?
雨に打たれたから?
トイレにいったから?
そして白いブラウスの女が纏った花の匂いのするトイレで用を足したから?
理由は考えてもわからない。
これからずっと考え続けてもわからないだろう、そんな気がして考えることをやめた。
私を覆っていた暗い空はゆっくりと薄くなっていった。
今の私は午前中の私より少しだけ頑張れるだろうな。